技術者見習いのメモ書き

電子工作や神社めぐりなどの趣味の話を中心に書いていきます。 Twitter:@hakura_riku

UL規格の概要

はじめに

近年様々な企業でULの不正取得などが話題になっていますが, ULの内容について自分が正確に把握できていないと感じたので調べた内容をまとめます.

ULとは

UL はアメリカの政府機関ではなく, 「公共安全」をミッションとし、安全規格の開発とそれに準じた製品試験・認証を活動の核としつつ、安全な世界作りに奉仕する民間の組織です[1].

民間の認証機関であるULが米国内で効力を持つ理由は, 安全規格を取りまとめる米国労働安全衛生当局(OSHA) が認定した試験機関であるからです[2].

米国における安全性審査について

アメリカ国内の労働環境で使われる製品を製造する製造者は, OSHAによって定められている電気安全規格に適合する必要があります. 自社製品が上記の規格に適合していることを裏づけするために, 製造者は国家指定認定機関(NRTL)の認証を受けなければなりません[3].

OSHAが認定している認証機関はULの他にもあり, 参考文献4を確認すると2021年8月現在は18の団体がNRTLとして認められているようです.

ULマークの形状と意味

ULマークの形状は流通する国や規格で異なるため本ブログでは代表的な6種類のマークを紹介します. マークについてより詳細に知りたい方は参考文献5をご参照ください.

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代表的なULマークの一覧

リスティング・マーク

リスティング・マークは, 一般的に最終製品につけられるマークで, いかなる条件のもとで使われても安全であるように製作された製品や部品がこの対象となります.

一般消費者も使用することを考慮して広範囲にわたって安全性について調査, 試験が実施され, 合格するとUL が発行する製品別リスト(グリーンブック)によって一般に公表されます[6].

レコグナイズド・コンポーネント・マーク

レコグナイズド・コンポーネント・マークは, 単体では機能しない, あるいはその機能が制限されているコンポーネント(部品・材料)に対するULの認証マークです[7]. 試験に合格するとULが発行する登録部品リスト(イエローブック)に記載されます[6].

レコグナイズド・コンポーネントには, Conditions of Acceptability(部品使用許可条件)が定められており, これを考慮して最終製品に組み込んだり, 使用する必要があります[7].

クラシフィケーション・マーク

クラシフィケーション・マークとは, 製品固有の性質を検査し, 特定条件下での使用が可能かどうか, また予測可能な事故に耐えうるかどうかを評価, 認証されたことを示すマークです[7]. 医療機器や工業用器具, 防火機器などが主に対象となります.

C-ULマーク(アメリカ‐カナダ相互認証)

アメリカとカナダには、MRA (Mutual Recognition Agreement)という安全に関する規格の相互認証制度があります.

ULにてカナダ向けに製品安全認証を受けた場合、CSA規格に適合していることを意味するC-ULマークを製品上に表示でき, カナダ国内ではCSA認証と同等に扱われます[8].

プロシージャ

製品の評価が完了した際に、プロシージャと呼ばれる文書が発行されます. プロシージャに記載されている内容と異なる製品を製造, 販売した場合にUL違反となります.

この文書には製品の継続的な適合性を検証するための要求事項が規定されており, ULの工場検査はこのプロシージャの内容に従い行われます[9]. プロシージャにどの様な内容が記載されるかを詳細に知りたい方は参考文献10のP103~P110をご確認ください.

UL規格の調べ方

UL取得の際に実施する試験の規格についてはULの公式サイトから無料で確認することができます[11]. 企業に所属している方はサイトに登録することでデータをダウンロードすることが可能ですが, 個人利用の場合はWEB上での閲覧のみになります.

企業向けのサイト使用方法は参考文献12を個人向けサイトの使用方法は参考文献13をご参照ください.

企業に所属している方向け

www.ulstandards.com

個人で規格を閲覧したい方向け

www.shopulstandards.com

おわりに

UL規格の概要をまとめました. ULマークの違いなど自分の知識があいまいになっていた部分を再確認する良い機会でした.

参考文献

[1] 株式会社 UL Japan, ‘‘1-1. ULについて・UL規格全般, ” https://japan.ul.com/faq-landing/1-1-ul%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%83%BBul%E8%A6%8F%E6%A0%BC%E5%85%A8%E8%88%AC/.

[2] 日本認証株式会社, ‘‘世界各国の規制・認証制度 北米, ” https://www.japan-certification.com/certification/world/north_america/.

[3]テュフズード, ‘‘NRTLが重要な理由, ” https://www.tuvsud.com/ja-jp/services/product-certification/nationally-recognized-testing-laboratories.

[4]Occupational Safety and Health Administration, ‘‘Current List of NRTLs, ” https://www.osha.gov/nationally-recognized-testing-laboratory-program/current-list-of-nrtls.

[5]UL, ‘‘UL Mark Artwork, ” https://marks.ul.com/about/ul-listing-and-classification-marks/downloadable-ul-marks/.

[6] 富士電機株式会社, ‘‘UL 規格認定取得機器, ” https://www.fujielectric.co.jp/fcs/pdf/standard/62B2-J-0009_ul.pdf.

[7] 株式会社 UL Japan, ‘‘1-2. 安全試験・認証, ” https://japan.ul.com/faq-landing/1-2-%e5%ae%89%e5%85%a8%e8%a9%a6%e9%a8%93%e3%83%bb%e8%aa%8d%e8%a8%bc/.

[8] 株式会社KEYENCE, ‘‘第1章 各国の製品安全規制について 北米, ” https://www.keyence.co.jp/global/special/other/export/products/03/.

[9] 株式会社 UL Japan, ‘‘2-1. フィールドサービス (工場検査), ” https://japan.ul.com/faq-landing/2-1-%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9-%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E6%A4%9C%E6%9F%BB/.

[10] 株式会社 UL Japan, ‘‘002 申請ガイド - UL Japan, ” https://japan.ul.com/wp-content/uploads/sites/27/2014/03/0_application_guide-jpn.pdf.

[11] 株式会社 UL Japan, ‘‘UL規格提供サイトのご案内, ” https://japan.ul.com/resources/sccl/.

[12] 株式会社 UL Japan, ‘‘Standards Certification Customer Library (UL規格提供サイト) 登録手順, ” https://japan.ul.com/wp-content/uploads/sites/27/2014/06/0_sccl.pdf.

[13] 株式会社 UL Japan, ‘‘オンライン UL 規格閲覧手順, ” https://japan.ul.com/wp-content/uploads/sites/27/2019/11/1_Access_to_UL_Standards_Sales_Site.pdf.